CompTIA

クラウド時代の人材育成を考える 2




CompTIAでは、現在「CompTIAクラウド調査」を公開し、現在のクラウド環境の企業での導入状況や推進する上での問題点などについてご案内しています。

調査報告でも様々な課題や問題点などについて触れています。では、実際にクラウド環境を導入する際に必要となる人材とはどのような人材なのか。また、これらの人材はどのように育成すべきか。

今回、CompTIA日本支局では、各企業の第一線で活躍をされており、またCompTIA認定資格の開発にも携わっていただいているCompTIA SMEコミュニティの皆様と、2012年5月より日本語試験の提供が開始されたCompTIA Cloud Essentialsの開発パートナーであり、トレーニングパートナーでもある株式会社ITプレナーズジャパン・アジアパシフィックの皆様に座談会形式でインタビューをお願いしました。

今回は、インタビューの模様の第2回をお伝えします。

<参加者の皆様> 
CompTIA SMEコミュニティ (社名50音順)
NTTデータ ジェトロニクス株式会社  堀江 和昭 氏
NRIセキュアテクノロジーズ株式会社  時田 剛 氏
オムロンフィールドエンジニアリング株式会社 古田 拓 氏
日本アイ・ビー・エム株式会社  平山 敏弘 氏 
富士ゼロックス首都圏株式会社 神﨑 賢太郎 氏 
株式会社ラック  長谷川 長一 氏 
株式会社ラック  安田 良明 氏 
 
株式会社 ITプレナーズジャパン・アジアパシフィック 富田 勲 氏 / 飯久保 翔 氏 /  岡本 宗之 氏
 
 CompTIA日本支局 板見谷 剛史 / 吉村 睦美(編集)



第1回はこちらから


クラウド時代に求められる人材


富田氏
ところで、クラウドの導入が進められていくなかで、既存の人材ではなく、新しい人材像が必要なのではないだろうかということが言われています。例えば、IPAではクラウド導入において必要なのは「目利き人材」という風に書かれていらっしゃいます。Gartnerでは、「クラウド・サービス・ブローカー」というような呼び方で、組織内でコーディネーターのような位置づけで検討・導入・利用ができる人材が必要だと言われています。日経コンピュータでは、スペシャリストではなく「マルチスキルの人材」というのが書かれています。いろいろな呼び方はされていますが、共通しているのは、事業の視点を持ちながら、クラウドサービスの要件定義、設計、構築から運用、サービスの改善まで、ライフサイクル全般について精通している人材が必要とされていることです。


板見谷
一方で、提供側にもこれらの人材は必要だと考えています。サービスを利用される企業の皆さんが、雑誌やWebなどの情報をもとに、こんなのがいいんじゃないか、あんな事ができるんじゃないかといったようなことを検討されると思うんですよ。それを提供企業に相談した場合、それぞれに対して、どのようなメリットがあるのか、またはデメリットがあるのかリスクがあるのか、コストはどうなるのかといったようなことを話せる人材がいることは、とても重要ですし、顧客の業務に即したサービスの提案や提供が可能だと思います。


平山氏
確かに、クラウドの導入という意味では、利用側にも導入側にも、営業系の観点だったりとか、コンサルタント的な観点だったりとか、かなり広い視野と業務を理解している必要があると思います。またクラウドサービスへの移行をする上では、サービスのカタログ化という言い方をしていますが、自社の業務やサービスをカタログ化できるようなスキルも必要になってくるかと思っています。このように考えると、クラウドを導入を推進する人材というのは、非常に広いスキルが必要になってくるかと思います。例えば今回CompTIAから提供されているようなCompTIA Cloud Essentialsでも、入門編と言いながらも、テクニカルにとどまらず幅広いスキルが求められていたかと思います。そういう意味では、技術的なスキルというよりもビジネスとしてクラウドを良く知っている人材でないと、入門としても難しいのかなという印象を持ちました。


富田氏
そうですね。Cloud Essentialsに関しては、当社で提供をしている教材の中でも、ビジネス視点や経営的な視点に重点が置かれています。またクラウドの導入、運用、管理を実施する上で、発生しうるリスクや課題、また導入により得られるメリットなどを中心に学べるようになっています。トレーニング全体の40%位をケーススタディをもとにした演習を実施して、演習テーマにそって、グループでクラウド導入のためのシナリオを作っていただき、その上でディスカッションをしていただきます。実際に想定できるケースなのですが、クラウドを積極的に導入を進めたいと考えているグループと、クラウドの導入に消極的なグループとでどのようなシナリオを提案していくべきかといったことを検討していただきます。このような様々なグループでシナリオを作ってもらうことによって、クラウドはもちろん、その他のITサービスのメリットやデメリットなどを整理して、それぞれの視点を学んでいただくというのが目的です。



平山氏
なるほど。トータルでIT環境やビジネスを理解しているような人材でないと、クラウド自体を導入する上でのメリット、デメリットなどを理解することは難しいですよね。ただ、残念なことに、現状としては、こういった人材がきちんとクラウドを導入しているかというとそういったケースばかりではなく、企業では、「コストが安くなる」という観点で導入を考えられる場合が多くあります。実際にコストダウンできるケースも少なくないのですが、クラウドのメリットというのはコストだけではありません。今まで運用されていたビジネスを見直すというところからスタートし、どの業務にクラウドを利用していくかといったことを、きちんと整理して導入することで多くのメリットを得られることがあると思います。そういった意味では、このようなことをきちんと実施できる人材を育成するということは、非常に重要なことではないかと思います。


富田氏
当社の研修の際にも、よく話をするのですが、クラウドを導入することで、自社のビジネスに何らかの付加価値を見出すという視点を学んでいただきたいと思っています。そのために、導入の上での考え方や観点、導入後の着目点などについて、学んでいただきたいと思っています。


平山氏
業務が全部クラウドになるということは、とてもレアケースなのですが、実はそう思っている人も結構多いんですよ。もしくは、クラウドを導入することによって逆にコスト高になってしまうこともあるのですが、このような現実もあまり検討されていないことが多くあります。実際に、現在、自社で運用しているサービスのサービスレベルをそのままクラウドに移行した時に、同じサービスレベルであれば、ものすごくコストがかかったりします。サービスのどの部分が最重要といったようなサービスレベル全体の見直しをすることも、クラウドを推進していく上では必要になるでしょう。業務を理解した上で、取捨選択や最適化を実施しなくては必要なクラウドサービスは見えてこないと思っています。


長谷川氏
日本で実施されているアンケートなどを見ると、CIOの方のミッションはシステムに対するコスト削減であったり、クラウド導入のメリットはコストカットと考えられていることが多いようです。メリット・デメリット、リスクの尺度がコストでしかないのは、少し問題ですよね。


平山氏

そうですよね。コストもメリットの一つなのですが、どのような選択をするかによって、メリットを活かした上でコストの削減ができるというのが良い方法です。例えばですが、車の購入で考えると、毎日タクシーに乗っていたり、一年中レンタカーを借りているのであれば、自家用車を購入した方のメリットが高い場合もありますし、必要な時だけ使いたいのであれば、タクシーを使った方のメリットが高い場合もあります。要は、その用途と目的によって、どのような方法を選択できるかということだと思います。そしてそれを選択することによってコストの面からも検討ができるのではないでしょうか。


安田氏
クラウドという考え方が普及していなかった頃のIT人材というのはビジネスプロセスの検討やBCPへの検討ということを一つ一つ積み重ねて勉強をしていく、もしくは経験をしていくという方がほとんどだったと思います。そのため、現在の全てを知らないと仕事にならないというような考え方に少し違和感を持ってしまうのかもしれません。でも、以前からICTを活用していくということは、実は全てをきちんと把握していなければいけなかったと思います。そのため、今の若い人材、クラウドのような考え方が当たり前になってきてからITに携わっている人材にとっては、業務を含め全体を知らないとICTを組み立てられないというのは違和感が少ないかもしれませんね。
また、再三話は出ていますが、以前のように選択肢が、ハードウェアやソフトウェアといった面だけではなく、あるサービスのこの部分を使おう、またはこの部分は自社で開発をしようといった形で選択をすることが増えています。選択肢が広がっているということは、自社の責任下において選択をしていく必要があるため、意思決定ができる人材がどうしても必要となってくるわけです。選択肢が広がった分、これらをきちんと選択できる人材を育成していく必要があるわけです。

長谷川氏

現在、ある協議会での利用者側と事業者側の両面からクラウドを利活用できる人材についての検討に参加しているのですが、現時点では、利用者側での人材の検討を進めています。企業でのCIOITストラテジスト的な役割を持つ人材についてです。これらの人材がクラウドに対してどんなスキルを必要とされているかというと、クラウドの選択、適用、点検といったようなスキルです。実装や開発などを実施するわけではなく、きちんと自社の業務を理解した上で様々なクラウドサービスを選択できるということが求められます。継続的に人材育成を実施し続けることが必要になってきますので、業界的にこの体制が整えられることが必要になってくるかと思います。


富田氏
確かに、今お話に出たようなことを全て理解している人を育成する、もしくは育成し続けるのは、結構大変な部分も多いですよね。

 

今後、人材育成については、当社からもいろいろなご提案やトレーニングの提供などを続けていければと思っています。

本日は、ありがとうございました。

 



 

CompTIA SMEコミュニティとは

CompTIA SMEコミュニティ」とは、CompTIA認定プログラムの開発に携わる現場のエキスパート(Sbject Matter Experts)の皆様が、20114月に設立したコミュニティです。
IT
エンジニアの人材育成への提言や、学校機関を中心に、業界研究やセミナーを通して、業界で求められるITスキルを生の声として伝える活動などにご協力をいただいています。
http://www.comptia.jp/press/110405.html


株式会社ITプレナーズジャパン・アジアパシフィックとは

ITプレナーズは、ITIL®やCOBIT®に代表されるITサービスマネジメント、およびITガバナンスのトレーニング、およびコンピタンス構築ソリューションの開発と販売におけるグローバルリーディングカンパニーです。2001年オランダのロッテルダムで誕生し、以降、世界10カ国の拠点からグローバルにビジネスを展開しています。
大手金融機関であるING社がクラウド導入の際、全社員に対してのトレーニングを提案・実施。この実績に基づき、CompTIA Cloud Essentials認定資格のベースを開発。現在は、CompTIA Platinum Authorized Partnerとして、Cloud Essentialsのトレーニングを提供中。
http://www.itpreneurs.com/
 

 



 

 

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