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真のプロフェッショナル・インストラクターとは
第4回コラム : 「プロ・インストラクターとしての活躍の場と心構え」

筆者紹介:
株式会社エイチ・アール・ディー研究所 専務取締役研究所長 安田孝雄 氏

沖電気工業 人材開発センタ営業教育グループ長、ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社 監査役、インストラクション部シニアコンサルタントを経て、2003年独立し現職。COOとして営業、開発、インストラクションの各部門を束ねて統括。関与企業延べ300社以上。研修におけるトレーナーの質の重要性について訴え続け、CTT+取得支援のために出版、講演、研修などに奔走中。所有資格:CTT+、CDAなど。
(株式会社エイチ・アール・ディー研究所についてはこちらからご覧ください。)

 

これまで3回にわたりプロフェッショナル・インストラクターに求められる基本的な考え方や知識・スキルがCTT+の中で十分に定義されていること、またどのように定義されているかを述べてきました。連続してお読みいただいた方々とはインストラクターという仕事の素晴らしい価値を共有できたのではないかと思います。今回は更にこの仕事を魅力あるものとし、この仕事を成功させるにはどうしたらよいかを考えたいと思います。これにより更に多くの方がプロ・インストの世界から喜びや充実感を得ていただければ幸いです。

まず、プロと呼ばれているインストラクターの方たちがどのような立場にいるか、例をご紹介しておきましょう。これがすべてではありませんが参考になると思います。

@ 企業内の人材開発部門でインストラクターをしておられる方々
A 企業内の事業部門でインストラクターをしておられる方々
B 研修会社でインストラクターをしておられる方々
C 何らかのきっかけで独立してインストラクター業を営んでいる方々
D 専門的なコンサルタントをしながら、インストラクターも担当するようになった方々
E 弁護士事務所のような協同組合的な会社で、経営者兼インストラクターとして働く方々

上記のような立場を複数経験しながらキャリアを積んでいかれる方も多くいらっしゃいます。なお、我社のインストラクターはEの立場にあたります。

たとえば、企業内の人材開発部門でインストラクターとして働いていると、自社の企業戦略や部門戦略、受講者情報を入手しやすく、また継続的に結果をモニターして効果をあげていくという責任があります。これは非常にやりがいと意義のある仕事ですが、一方で、1つの組織内に長くいると、組織によっては部門内外からのプレッシャーが大きかったり、あるいはなかなか新しい施策をうつことができなかったりして、息苦しさを感じる場合があります。そして、中には、もっと幅広くいろいろな企業での人材開発をお手伝いした、ということで研修会社に転職して、インストラクターを担当される方もいらっしゃいます。

一方で、研修会社でインストラクターをしていると、さまざまな組織や受講者と関わりながら1つ1つの研修プロジェクトでの役割を果たし、自分の領域を広げていくことができます。しかし、最終的に人材開発の責任を負っているのはクライアントであり、外部のインストラクターは深い部分まで関わるのが難しいこともあります。そこで、もっと本質的な部分に深くかかわり、成果を上げるところまで支援したいと考えて、企業内人材開発部門に転職される方もいらっしゃいます。

また、企業内や研修会社でインストラクターをしていると数多くのセミナーを担当することになり良い経験を積むことができます。が、経験を積むにつれ、中には給料の安さをしみじみと感じ、独立される方もいらっしゃいます。ただ、営業する意欲や能力のある人は独立して高収入を目指す方が多いのですが、実際には仕事を自ら継続的に見つけてくることは並大抵のことではありません。ですから、多少収入は少なくても仕事を見つけてくるストレスを避けてインストラクションの喜びを味わいたい方は組織に所属されるほうがいいかもしれません。参考までに、多くの独立インストラクターが取っている道は、研修会社と外部講師の契約をして仕事をもらいながら、研修会社とバッティングしないクライアントから直接取引もして少し多めのインストラクション料をもらうという形です。

ここで、上記のどんな立場にいるとしても、プロのインストラクターとして成功するためのいくつかの心構えを挙げておきたいと思います。CTT+の基本精神には、これまでのコラムでも紹介した@『受講者中心主義』A『G-PDCA』、その他にはB『責任を持って最後までクラスをコントロールする』、があります。ここでは、『受講者中心主義』を敷衍し(趣旨を押し広げ)て@「WIN/WINの精神」、CTT+でも定義されているA『G-PDCA』がまず中心となりますが、『責任を持ってクラスをコントロールする』ための大前提であるB「健康を維持すること」の大切さも加えておきたいと思います。

1. プロの講師として成功する第1の秘訣は「WIN/WINの精神」
WIN/WINについてはもう説明する必要はないでしょう。プロの講師の成功の尺度は「組織と受講者の学習目的・目標の達成を支援し、満足を得たか」であり、受講者が学習内容を業務に役立てることをどれだけ支援したかが先ず問われることを努々(ゆめゆめ)忘れてはなりません。このようなこと、つまり受講者のWINが実現できたときに、に初めてインストラクターのWINと言える素晴らしい成功体験や賛辞、感謝、名声そして再注文などが得られることになるのであって、その逆ではないのです。CTT+では『受講者中心主義』が中心に据えられていますが、組織の背景情報を収集し活用することも当然の役割として明記されています。
ここで留意したいのは、組織とはあくまで受講者が所属する組織のことであり、インストラクターの所属組織を指しているのではないということです。インストラクターは、それぞれの立場や状況に応じて、「自分のお客様は誰なのか?」を考え、できる限り関係者全員のWINを実現し、結果として自分の所属組織のWINも実現できるよう努力しなくてはなりません。

2. 第2の秘訣「G-PDCAのG」
飛行機のパイロットの格として飛行時間があるのと同じようにインストラクターもどれだけのコースを何時間(日数)経験したかは非常に大切です。様々な経験がインストラクションの品質を向上し受講者の成長を支援する実際的な知恵となって身についてゆきます。しかしそれは一回一回の研修をどれほど丁寧にやったか、すなわちG-PDCAをキチンと回したかによります。
ここで特に意識しておきたいのは、Goalをどのように設定するかということです。上記のWINWINの精神とも関連して「誰にとってどのようなGoalが達成されればいいのか?」や、また「人材開発の長期的なGoalから考えると、今回の研修のGoalの位置づけをどう考えればいいのか?」という視点も大切になってきます。インストラクターが影響を及ぼすことのできる範囲によっては難しい場合もありますが、いずれにしても幅広く深く状況を鑑みた上でGoalを設定する必要があります。そして、そのGoalに対してPDCAを回したかを、まず自分自身に問うことがプロには求められているのです。

3. 第3の秘訣「健康こそプロの講師の最大の能力」
責任を持って最後までクラスをコントロールするための前提として、インストラクターは日頃から心身ともに健康に気遣い、特に担当する数日前からインストラクションの準備と共に心身の準備に入ることが必要です。
ビジネスパーソンとして当然のことかもしれませんが、インストラクターは絶対に穴をあけることができません。大げさかもしれませんが、実際に親の死に目に会えなかった人さえいるくらいです。研修では多くの参加者を集めており、そのインストラクターの都合で日程を変えることなどは絶対にできませんし、急に穴を埋めることのできる人はいない場合が多いのです。研修を途中で中断することはできませんし、まして遅刻、早退などとんでもないことで、そうした欠陥を克服できない人はプロのインストラクターとしては失格です。
また、最近は著作権や個人情報の保護などコンプライアンス(法令順守)は当然のことですが、特に独立したインストラクターは契約している研修会社とのバッティングには気を遣う必要があります。自分自身の力で開拓したクライアントに大手を振って出入りできるようにする誠実さも、心身の健康には大切なことだと思います。


真のプロフェッショナル・インストラクターは「価値創造のできる社員の育成と企業の成長に貢献する」非常に重要な仕事です。重要な仕事であるがゆえに、その責任も大きいですが、それだけによい仕事ができれば仕事から得られる喜びもまた大きいものです。こうした意識のもとに働く仲間のインストラクターのみなさんと、これからもさらに多くの方々に、この素晴らしい仕事から得られる大きな喜びを一層味わっていただきたいと思います。そのためにもCTT+の資格を取得し、その意味するところをいかんなく発揮されることを願いつつ筆を置かせていただきます。


【「真のプロフェッショナル・インストラクターとは」コラム バックナンバー】
第3回コラム :「真の『PDCA』を実践することは簡単か?〜『GGG-PDCA』のススメ」
第2回コラム :「真の『受講者中心主義(learner-centered approach)』とは」
第1回コラム : 「CTT+はプロ・インストラクターの守・破・離の素〜人材開発部門への処方箋〜」

(参考)HRD研究所では、CTT+に準拠したインストラクター養成塾を開催しています。
http://www.hrdins.co.jp/seminar.html

 


 

 



 
 
 

 

 

 
 

 
 
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