米国本部ブログ: The Shape of Technology
CompTIAでは、IT業界のダイナミクスを分析し、テクノロジートレンドを予測する「IT Industry Outlook 2023」を発表しています。それらのトレンドは、マクロ経済の問題や具体的なテクノロジーについて触れることがありますが、私たちは通常、特定の視点に焦点を置きます。しかし、ビジネスや社会でのテクノロジーが新たな局面を迎えている今、より大局的な視点が展開されています。
これについては、過去にテックラッシュやテクノロジー分野での規制強化に触れた際に示唆したことがあります。全ての業種にはライフサイクルがあり、内外の力によって成長(または縮小)します。テクノロジー業界も同じです。よくクラウドとモバイルがエンタープライズテクノロジーの新時代を築いたと言われますが、同時期に消費者側の変化も、テクノロジーエコシステムのかたちに同等もしくはそれ以上の影響を与えました。それから15年後、そのかたちは再び変わりつつあります。
1. テクノロジー業界はすっかり成長した。以前にも述べたように、2007年以前のテクノロジー業界は主にビジネス界に重きを置いていました。Amazonウェブサービスが企業向けクラウドの新たな一歩を踏み出す一方で、iPhoneは消費者向けの技術統合のニューウェーブを起こしたのです。その後15年以上に渡り、この2つの新しいモデルが組み合わさることで、驚くほど多くの機能が生まれ、社会構造に深く浸透していきました。
未来に向け、テクノロジー業界はもはや世界経済の「中堅」どころではありません。世界で最も価値のある企業5社のうち4社がテクノロジー企業であり、デジタル製品とサービスは、他のあらゆる産業の下支えとなっています。これまで見てきた規制の動きは、テクノロジーが今後直面する障害や監視を考えると、氷山の一角に過ぎないのです。
2. 経済の風向きが変わる。2007年から2008年にかけての金融危機と、この新しいテクノロジーモデルの始まりは、奇妙ですが時期がほぼ重なります。経済活動を活性化させるため、米国連邦準備制度理事会(FRB)は歴史的なフェデラルファンド金利を引き下げ、5年以上に渡ってゼロに近い水準に維持しました。新しいテクノロジーモデルを手にしたほとんどの起業家やベンチャーキャピタリストは、デジタルスターとなったのです。
この時期に立ち上げられたビジネスの多くは、巨大な規模に成長して、その後(どうにかして)ユーザーを収益化することに賭けていたのです。しかしこの1年から1年半の間に、このシナリオを転換させる2つのことが起きました。これらのビジネスモデルは不安定であることが証明され、ゼロ金利政策(ZIRP)の時代が終わりを告げたのです。資金が自由に行き渡らなくなり、収益目標が達成されないことが多くなった今、新しいITベンチャーは、製品の適合性とユニットエコノミクス(採算性)にもっと焦点を当てる必要があるでしょう。
3. Web3・・そしてWeb2.0の課題。多くの点で、私たちはまだインターネットというものと折り合いをつけているところです。パンデミックでは、ネット上での確固たる存在感を示すことの重要性が強調されましたが、これは今でも多くの中小企業にとっての願望といえるでしょう。同時に、インターネットサービスに関する概念そのものが試されているのです。
Web3 は、所有権を再定義し、ゲートキーパーを排除する分散型アプリケーションのニューウェーブの到来を告げるものでした。ブロックチェーンのような基盤技術は、最終的には重要な構成要素となるかもしれませんが、暗号資産が大荒れとなった昨年後、私たちはまだキラー(大きな影響力のある)アプリを待っている状態です。一方、Web2.0のユーザー主導型モデルも、上記のようなビジネスモデルの問題や、コンテンツモデレーション分野などの難しさもあり、いくつかの課題を抱えています。インターネットは今後も進化し続けますが、革命が起こるとは思えません。
4. 征服する世界はもうない?テクノロジーの歴史は、それが生活の中に溶け込む製品であろうと、必要と知らなかったサービスであろうと、全く新しい現象を生み出すことにその魅力の一端がありました。イノベーションにより、仕事でも日常生活でも、より速く、よりフレキシブルに、さまざまな行動が可能となりました。
驚くような開発に終わりが来たと予測しているわけではありません。しかし、テクノロジーのためのテクノロジーは、少なくなってきているのかもしれません。テクノロジーと他分野の統合がボトルネックになるケースがますます増えており、そうした複合的なシステムを深く理解する必要性が高まっています。収益性のあるソリューションを必要としている問題は山積みでも、誰も気づかないような10億ドルのアイデアはそう多くはないでしょう。
これは、テクノロジー業界に従事する人たちや技術職の人たちにどのような意味を持つのでしょうか。間違いなく、テクノロジーを使うスキル、物事がどう進化していくかを見極めるスキルは今後も求められるものです。ネットワークやサイバーセキュリティのようなコアテクノロジースキルに加え、テクノロジー統合による長期的影響を考慮し将来の成功に向けた戦略を構築できる人材が組織には必要となるでしょう。テクノロジーのかたちは変わっても、それは次なるチャンスを開くだけなのです。
IT Industry Outlook 2023は、こちらからご確認ください。