NSSは人が持つ知識・技能を下から上に行くピラミッド型の概念構造で表現し、それらの繋がり・道筋や職務上どういうスキルが必要かを特定化するための一貫した構造を目指したものである。IT分野だけではなく、製造、販売・サービス、教育、観光などでも進められている。ねらいは、教育・雇用の両面で貢献すること。具体的には、企業の人事部でNSSの基準を参考に、採用の決定、必要となるスキルの選択、訓練内容の特定化、従業員のパフォーマンス管理など、人事関係の活動でよりどころとなることがねらいである。かなり広義に職能にクラスタ分けをしておき、州を移動しても有効であるようにしてある。
NSSシステムを推進する機関はNSSB(National Skill Standard Board)といわれるもので、実際にNSSの開発及び利用を行うのが、Voluntary Partnershipと呼ばれる組織である。このVoluntary Partnershipの形成のためにNSSBが資金提供を行い、プロジェクトマネージャーを選定、そのプロジェクトマネージャーから州関係者やICT業界、教育界、各種団体の参加を募る。参加メンバーが揃ったところで、NSSBが組織として承認し、実際の開発、研究、利用に移る。CompTIAは「情報技術・通信」分野である“ICT(Information Communication and Technology) Voluntary Partnership”のプロジェクトマネージャーであり、メンバーにはIBMやMicrosoft、Cisco、Novell、HPや、NWCET※(National Workforce Center for Emerging Technologies)など50機関近くで構成されている。(「IT」ではなく「ICT」と使われていることが、後述で分かる。)各企業が独自のキャリアパスを持っており、覇権争いを招く恐れがあるため、プロジェクトマネージャーとしての条件は、中立・公正な立場であること、トレーニングや教材など作成していないこととされ、CompTIAがその適任とされた。
Voluntary Partnershipが組織として承認がされると、NSSBが研究資金を提供し、それを基にスキル・スタンダードの策定が行われる。資金は「計画」「研究」「評価認定プログラムの開発」に分けられ、ICT内での各産業の定義、“Concentration”の定義、職務と人材の構成要素の開発といったガイドラインの作成を行い、実証実験及び検証を行う。“Concentration”とは、最前線で働く方の業務範囲で必要とされる知識やスキル、パフォーマンスをいい、一連の関連業務をカバーしている。カテゴライズされた7つの“Concentration”は以下のとおりである。