CompTIA(コンプティア)は、IT業界団体としてワールドワイドでCompTIA認定資格などを通し、健全な人材の育成に貢献しています。

謹啓 会員の皆様方におかれましては、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は、当団体に格別のご高配を賜りまして、誠にありがとうございます。
 日本支局が設立されて以来、1年半が経過し、加盟をいただきました会員の皆様の所在地も、お蔭様をもちまして全国を横断できるネットワークにまで発展致しました。会員の皆様には、改めて御礼を申し上げますとともに、今後ともご高配を賜りますよう、改めてお願い申し上げます。
 さて、この度日本支局では、CompTIAという団体をより深くご理解いただくために、「CompTIA Boot Camp」を企画いたしました。「CompTIA Boot Camp」は、CompTIAという団体の存在が、皆様に認知され始めた今だからこそ、ホームページや講演、ご同行などで語りつくせなかった、様々な活動内容を会員の皆様にご案内申し上げる「活動報告」です。私どもCompTIAは日々何を目的とし、何を考え、活動しているのか。米国はもとより、欧州、アフリカ、オセアニアで展開いたしております様々な活動につきましてご理解をいただくために、何卒ご高覧賜りますよう、宜しくお願い申し上げます 。
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image 第1回 CompTIAという団体のお仕事 −その1・スキルスタンダードとCompTIA image
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  【PDF】  
米国では、80年代から90年代にかけて、各業界で認証・評価に関するプログラムや仕組みが創られ、それぞれがバラバラな形で存在していた。資格の場合、数千にも及ぶそれらの多くは、州管轄の下にスキルの認証を必要とする職業(看護婦など)と関連していたり、IT業界などでは産業界が認証するものであった。地域や職務により要求されるスキル要件も違っていたため、例えばある州の認証するものは、大抵は他州で取った認証を認めず、州を越えて転職する場合には取り直さなければならないような、「ポータブル性」に欠けたものであった。現状、CPA等は、未だその伝統が生きている。さらには雇用主が入手できる認証や資格に関する情報は非常に詳細であり複雑であった。即ち、業務上広く認証する必要がある場合、認証を得る目的だけで時間がかかりすぎ、本来のテクノロジーへの対応やその時々の職務において遅れ(ディレイド・スキルギャップ)が生じるという問題がある。そこで解決策として出されたのがNSS(National Skill Standard)システムの考えである。
 社会的な背景で見た場合、1980年代から1990年代にかけて、対外的にみた国際競争力の低下とそれを受けた失業率の増加や労働者の質的低下が問題視され、国内では人種的な格差、貧困、麻薬、暴力等の社会問題が学校教育にも大きな影響を及ぼし、全米規模における教育改革の重要性が焦点となった。1990年、ブッシュ(現大統領の父)政権は、2000年までに実現すべき国家教育目標((1)すべての子供に対する就学前準備の完了、(2)90%以上のハイスクール卒業率、(3)生徒の成績向上と市民としての育成、(4)世界一レベルの数学・科学、(5)全成人による識字能力の取得及び生涯学習、(6)アルコール・覚せい剤のない安全で統制のとれた学校)を掲げ、1993年に誕生したクリントン政権は、上記6つの目標に、「教師への教育及びその専門性の開発」及び「親の参加」を加えた「2000年の目標:アメリカ教育法」を1994年に成立させた。そのアメリカ教育法の目的として、

・教育改革のための国の枠組を提供することで学習及び教授方法を改善すること。
・全ての生徒のための教育機会の公平さ及び高水準な教育の到達度を確保するために必要となる調査・研究、合意の形成、システムの変更を促進すること。
・すべての連邦政府による教育プログラムを再認可するための枠組みを設定すること。
・スキル・スタンダードと認証に関する自主的かつ全国的なシステムの開発・採用を促進すること。

があり、特にスキル・スタンダードについては、“連邦政府、州、地域、学校レベルで、高度な基礎学力、職業のスキル・スタンダードを満たし、雇用や市民参加の世界で成功するために、全ての生徒に公平な教育機会を率先して提供することを支援すること。”、“労働力の必要なスキルを高める国家戦略の要石として、スキル・スタンダード、認証に関する自主的な全国的システムの開発・採用を鼓舞すること。”と記載されている。
●NSS(ナショナル・スキル・スタンダード)システムとは
NSSは人が持つ知識・技能を下から上に行くピラミッド型の概念構造で表現し、それらの繋がり・道筋や職務上どういうスキルが必要かを特定化するための一貫した構造を目指したものである。IT分野だけではなく、製造、販売・サービス、教育、観光などでも進められている。ねらいは、教育・雇用の両面で貢献すること。具体的には、企業の人事部でNSSの基準を参考に、採用の決定、必要となるスキルの選択、訓練内容の特定化、従業員のパフォーマンス管理など、人事関係の活動でよりどころとなることがねらいである。かなり広義に職能にクラスタ分けをしておき、州を移動しても有効であるようにしてある。
 NSSシステムを推進する機関はNSSB(National Skill Standard Board)といわれるもので、実際にNSSの開発及び利用を行うのが、Voluntary Partnershipと呼ばれる組織である。このVoluntary Partnershipの形成のためにNSSBが資金提供を行い、プロジェクトマネージャーを選定、そのプロジェクトマネージャーから州関係者やICT業界、教育界、各種団体の参加を募る。参加メンバーが揃ったところで、NSSBが組織として承認し、実際の開発、研究、利用に移る。CompTIAは「情報技術・通信」分野である“ICT(Information Communication and Technology) Voluntary Partnership”のプロジェクトマネージャーであり、メンバーにはIBMやMicrosoft、Cisco、Novell、HPや、NWCET※(National Workforce Center for Emerging Technologies)など50機関近くで構成されている。(「IT」ではなく「ICT」と使われていることが、後述で分かる。)各企業が独自のキャリアパスを持っており、覇権争いを招く恐れがあるため、プロジェクトマネージャーとしての条件は、中立・公正な立場であること、トレーニングや教材など作成していないこととされ、CompTIAがその適任とされた。
 Voluntary Partnershipが組織として承認がされると、NSSBが研究資金を提供し、それを基にスキル・スタンダードの策定が行われる。資金は「計画」「研究」「評価認定プログラムの開発」に分けられ、ICT内での各産業の定義、“Concentration”の定義、職務と人材の構成要素の開発といったガイドラインの作成を行い、実証実験及び検証を行う。“Concentration”とは、最前線で働く方の業務範囲で必要とされる知識やスキル、パフォーマンスをいい、一連の関連業務をカバーしている。カテゴライズされた7つの“Concentration”は以下のとおりである。

・データベース開発・管理
・ウェブ開発
・技術文書作成
・ネットワークデバイス
・ネットワークインフラ
・プログラミング
・デジタルメディア
 http://www.comptia.org/sections/foundation/ict/files/concentration_summaries.pdf

一旦開発がされNSSBに評価されると、CompTIAの“Education Foundation”という人材育成活動のメニューに入る。Voluntary Partnershipはアドバイザリーになり、ガイダンスの実施、逐次スキル・スタンダードのレビュー及び維持へと活動を移行する。長期的にはVoluntary Partnershipが連邦の資金提供を受けずに、自立して運営できるように持っていくことが目標。NSSBはその際には、品質管理、資格認証の更新といったことが活動内容となる。
●IT分野以外におけるNSSの評価
IT業界以外の今日のNSSに対する評価は、プラス面よりもマイナス面が多い雰囲気がある。NSSはポータブル性という点で、各地域で必要とするスキルを広義に反映したものであるが、一般化しすぎており汎用しすぎる感があるという。ニーズに対応するフレキシブル性から見ると、各州で認証を進めている状況こそが、複雑でかなり詳細ではあるが、フレキシブル性を生み出すものであり、地域ニーズに対応し把握しやすい。NSSは、ポータブル性は持つが、フレキシブル性に欠ける。どちらかというとフレキシブル性をNSSは必要としたいが、それを求めてしまっては、大変な時間的金額的コストがかかり、作ってはみたものの時代は変わっていたという状況が予想できる。また、強引に作成した場合は、時代の変化に合わずマイナス面が浮き彫りになる恐れがある。
 NSSBが求めているモデル像に近づけない部分もある。ハイパフォーマンスな企業における新入社員から第一線労働者までの必要な能力とそのレベルは、各産業分野によって幅も深さも大きく異なる。上記の地域事情もあり、共通基準の抽出や選定、開発、検証作業が難しい。さらにはNSSB発足以前からスキル・スタンダードや評価制度を必要とし、開発・評価・認証している産業界の存在も頭を痛めている要因のようだ。結局本来の目的を果たせないで留まり、現にNSSBが発足して8年が経過しており、思ったような成果が出ていないのが現状のようだ。


 

 



 
 
 

 

 

 
 

 
 
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