実際のスキル・スタンダードの開発は、CompTIAとNWCET(National
Workforce for Emerging Technologies)が中心となって進められているが、これには理由がある。“Concentration”の定義や開発の参考となる、職種の選定、職種に応じた業務とレベル構成といったガイドラインの作成、そして前述の既存資格との統合に関する開発が2団体ではすでに進められており、そのデータを活用、さらに応用することで、NSSBの最終目的である“ピラミッド型の育成構造”を早急に実現することができるからだ。CompTIAが現在開発を進めている“Tech
Career Compass(TCC)”がそれにあたる。現在ベンダーが認定する資格プログラムや実務能力を認定するプログラムが、様々なジョブタイプに対応するグローバルな資格としては、450程存在する。これらを身近な業務に当てはめ、評価・認証できるシステム作りを行おうとしている。
「TCC」は業界の理解のもとに、業界が資金を積み構築される。CompTIAはここでも開発のプロジェクトマネージャーであり、職種、それぞれの職種に対応する職能、その定義、対応する資格の「羅針盤」を提供することが役割となる。これによりスキルセットの確定、キャリアパスの検討が容易になり、あらゆる需要に答えるスタンダードとしての確立を進めている。企業側にとってはジョブロール、パフォーマンスの査定スキルトレーニング・カリキュラムの設定などに利用が可能。個人のキャリアヘルプ・カウンセリングとしても利用が可能で、例えばキャリアパスにはない、ある職種から別の職種へ移る場合の道しるべも提供できるような構成も進めている。「認証」は、それぞれの資格運営母体が行えばよい訳である。
図1)Sample job detail
Job Category: Information Support
Job Title : PC Technician
Level : Entry
Alternate Titles : Maintenance Specialist
Essentail Functions : Repairs standalone or networked PCs
Tasks : Accepts input by phone, email or in-person
Skills : Can disassemble and reassemble computers
Knowledge : Knows alternate ways to boot a computer
Training Venders : New Horizons URL and description
Certification : CompTIA's A+ URL and description
経済産業省の「ITスキル標準(以下ITSS)」との比較が良くされるが、開発意図が全く違っているため、比較は不可能と考えている。逆に言うと、うまく双方を活用できれば、かなり有効に働く。「ITSS」がITプロフェッショナルの教育・訓練等に有用な「辞書」(共通枠組)と表現されている一方、「NSS」は将来的な技術の流れ(トレンド)を掴み、必要な人材にフォーカスした雇用や教育を考えたICT産業のガイドラインである。米国の産官連携がされたガイドラインであるということは、日本でも身近なITベンダー技術が多く含まれているものであり、それほど日本でも違和感はない。「辞書」を活用しながら、企業単位でのICT分野での具体的な「戦略」に合わせた人材育成、及び評価をする際に「NSS」や「Tech
Career Compass」を活用することが効果的な利用法と言えるであろう。
(第1回 終)
※NWCET(National Workforce Center for Emerging Technologies)とCompTIAとはパートナーシップを結んでおり、スキル・スタンダードに合わせた教育プログラムと人材育成ノウハウを持つNWCETと、NSSの策定に身を置き、業界団体の立場からスキル・スタンダードに資格プログラムとの統合を図るCompTIAのジョイントにより、一貫したスキル・スタンダードシステムの開発が可能としている。ちなみにCompTIA PresidentのJohn A Venetorは、NWCETのボードメンバーも兼ねている。